研究紹介

タイト結合の構造と機能

病理学第2講座で代々継続してきた研究テーマが「タイト結合と疾患」です。

 

タイト結合は、体表を覆う上皮細胞や血管内腔を覆う内皮細胞の細胞間の最も頂部側(すなわち最も外側)に存在する細胞間接着装置です。透過型電子顕微鏡では、隣接する細胞の細胞膜が融合しているように見えることから、密着結合とも呼ばれています(図)。凍結割断法では、膜内粒子の連続した配列(タイト結合ストランド)として観察され、ストランドの数はタイト結合の機能と関係が深いと考えられています。

タイト結合の機能として、(1)頂部細胞膜-側壁基底細胞膜の区画化による細胞極性の維持(フェンス機能)、(2)隣接細胞間のシールによる物質自由透過の抑制(バリア機能)および選択的物質透過(チャネル機能)、(3)細胞内シグナル伝達機能、が挙げられます。タイト結合機能の異常は多くの疾患と密接にかかわっており、当研究室では、正常細胞におけるタイト結合機能、さまざまな疾患発症に関与するタイト結合機能の障害・破綻について明らかにしてきました。近年では、がんとの関連に着目した研究を進めています。

図 黄色の矢印の細胞膜が接している領域がタイト結合​

 

図 凍結割断法で、タイト結合は粒子の連続したストランドの集合として観察される

 

タイト結合は細胞間の頂部に位置する。フェンス機能、バリア機能といったタイト結合固有の機能に加え、シグナル伝達機能を有することが知られている。

タイト結合関連タンパク質とがん

タイト結合を構成するタンパク質(タイト結合関連タンパク質)は、claudin、occludin、JAM等の膜貫通型タンパク質およびZO等の細胞質内の膜裏打ちタンパク質です。この内、タイト結合ストランド形成能を唯一有するclaudinは、27種類の遺伝子ファミリーから成り、その発現パターンが臓器固有の性質と密接に関わると考えられています。種々のがんにおいては、この臓器特異的発現パターンの変動が報告されています。

私たちは外科病理学的検討により、膵がん、胆道がん、子宮頸部腺がん、肺腺がんにおいてタイト結合関連タンパク質の発現亢進が診断マーカー・予後因子となり得ることを明らかにしました。さらに、それらのタイト結合関連タンパク質が、発がん刺激やがん悪性化刺激に応じて腫瘍細胞増殖、浸潤などを促進することを細胞生物学的手法により証明し、また、一部の抗タイト結合関連タンパク質抗体が、がん細胞の増殖抑制、アポトーシス誘導といった抗腫瘍効果を示すことを明らかにしました。

従来、タイト結合関連タンパク質は、がん化の過程において、がん幹細胞能の獲得や上皮間葉系移行(EMT)により発現低下するもの、すなわちがん抑制性に働くもの、と理解されてきました。しかしながら、わたしたちの研究成果は、タイト結合関連タンパク質をがん抑制性分子として一元的に捉えるのでは不十分であり、タイト結合関連タンパク質をがん促進分子としても新たに捉え直す必要性を提起しています。今後も研究をさらに発展させ、タイト結合関連分子のがんにおける役割についての理解を深めると共に、がんの新規診断マーカー・予後因子の確立及び新規治療戦略の立案にも寄与したいと考えています。

 

図 肺腺がんで異常発現するJAM-A。上皮内がんの段階からJAM-Aの高発現が確認できる。

 
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